郵政民営化を監視する市民ネットワーク

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 Ubin Watch news No.33
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郵政民営化後の各会社社員に従業員持ち株制度を導入?

利益最優先の経営への参画意識を向上させる?

  報道によると、郵政民営化の準備会社である日本郵政が、10月の民営化で発足する「日本郵政グループ」5社に従業員持ち株制度を導入する方針を固めました。導入の理由として「経営への参画意識の向上」などをあげています。
  民営化後3年目に株式上場を予定している「日本郵政」「ゆうちょ銀行」「かんぽ生命保険」の三社の株式が対象になりますが、これら三社の社員だけでなく、「郵便事業会社」と「郵便局会社」の二社の社員も前三社の株式を取得できるようにするとのことです。

  現在、多くの上場企業で同様の社員持ち株制度が導入されていますが、民営化される事業体において同制度を導入するということは、公共サービスの労働の質を大きく変えてしまう問題点があるといわざるを得ません。
  公共サービスにおける「経営」の最大の目標は、社会的に必要とされるサービスを、公平感のある低価格ですべての利用者に提供することです。
  しかし民営化された私企業の「経営」の目的は、一言でいってしまえば「利益」に尽きるのです。そこで働く労働者に、このような「経営」への「参画意識」を「向上」させることは、民営化に向けてますます切り縮められている公共サービスとしての郵政事業を、そこで働く労働者の意識の中から解体させていくことにつながります。

民営化の先輩、NTTの社員持ち株制度は

  1985年に民営化し、87年に東証一部に上場したNTTにも同様の制度が実施されています。NTTで働く労働者は次のように社員持ち株制度を批判しています。

  「社員持株会をつくり、労働者に一口1000円(何口でも可)で毎月賃金から天引きする形で積する形で積み立てし、時価の株価になったら、1株所有するというかたちですが、当時は200万円くらいまでいったのではないでしょうか。その後、株価は急落、いまでは50万円ほど。今も皆さんは『コツコツ』と積み立てていますが、ほとんどの人が1株にも達しておらず、やめるにやめられず不満を表明しています。止めるとかなりの損をするようで1株になるまで、積み立て続けなければならないようです。」

  民営化当時、NTTでは本来の公共サービスを投げ出して、「全員セールス」と称して、お客さん宅へ社長のあいさつ文を配らせたり、KYT(危険予知訓練)、名札着用の強要、安全唱和、QC活動などと、民営化に向けた「意識改革」の政策が強制された時期でもありました。このような施策と平行して社員持ち株制度も導入されました。
  その意図は明らかでした。利潤第一の会社経営方針に労働者の意識を統合することです。

社会的資産ではなく会社は株主のもの

  2006年3月22日、郵政民営化を推進した竹中平蔵氏が座長を務めた「通信・放送の在り方に関する懇談会」(竹中懇談会)の中で、ソフトバンクの孫正義社長やKDDIの小野寺正社長兼会長らから出された「NTTの設備は国民の社会的資産。独占するのはおかしい」という批判に対し、NTTの和田紀夫社長は、「民営化の時点で、株と株を売却した金は政府に渡した。社会的資産などと言わないでほしい。NTTは株主のものだ」と反論していました。
  公共サービスの分捕り合戦のサロンでのワンシーンとはいえ、この和田社長の発言は民営化によって公共サービスが誰に売り渡されてしまったのかを如実に語るものでした。
  さきほどのNTT労働者は次のように指摘します。

  「株価の変動と労働者の生産とは関係ありません。労働者は勘違いさせられています。業績が上げれば株価が上がると。実は財テクにもならないし、会社への帰属意識のみを強めるのが社員持株制度ではないでしょうか。個々の労働者が自社株を購入するのは自由かもしれませんが、労働組合は明確な態度を示さなければならないでしょう」

POST is not for sale!

公共サービスに真っ向対立の投信はいらない

  郵便局では、2005年10月から公共サービスと全く無縁どころか正反対の性格をもった金融商品―投資信託の販売をはじめました。
  投信には元本保証がない、という問題点だけでなく、証券会社の一方的都合でほとんど売れそうもない売れ残り証券を組み込んだパッケージを「売れ行き商品」などと称して販売されることは周知の事実です。
  そして投信を取り扱う郵貯や証券会社はどれだけ証券が暴落しても損をすることなくしっかりと販売手数料、信託報酬などを徴収します。それだけではありません。証券会社に流れるお金が投機マネーとして世界経済の混乱要因のひとつにもなっています。

  マネー市場は人々の必要や社会的価値とは全く無関係に価格の暴騰や暴落を繰り返すことで成り立っています。そして投資信託の購入に費やされたお金も世界のマネー市場を駆け巡って暴騰や暴落の要因となっています。
  売り手側の都合で開発され、資金は社会的必要性と全く関係のない投機マネー市場に流れる投資信託ほど公共サービスとかけ離れた金融商品はないでしょう。

  6月1日に発表された、5月末時点の投信の純資産残高は前月末比8%増の8535億3500万円と8000億円台にのぼり、保有口座数は同5%増の40万6886件に達しています。1年前に比べ純資産残高は4.6倍、保有口座数も3.2倍に拡大しています。
  担当職員は、毎日毎日このような金融商品を「ますます便利になりました!」と証券会社顔負けのセールストークで利用者に「お勧め」しなければならないのです。こうして「公共サービス」の理念は日々崩されているのです。

業務は西川社長がつくった大和証券SMBCに委託

  ちなみに郵政グループの従業員株主が参加する従業員持ち株会の運営事務は、大和証券SMBCに委託する見通しです。

  大和証券SMBCは、郵政グループの持ち株会社「日本郵政」社長の西川善文氏が当時頭取をつとめていた住友銀行が一部業務を譲渡して設立された会社です。
  その住友銀行がさくら銀行を合併して現在に至っている三井住友フィナンシャルグループが40%の株式を保有しているという、西川社長とは縁の深〜い日本最大の投資銀行業務を行う会社です。

世界でも民営化と株式会社化は公共の利益をもたらしません

  ソビエト崩壊後の混乱する市場経済の建て直し策として、ロシア政府は、国有企業の民営化を推進しました。
  ロシア政府は「バウチャー」という株式交換券を全国民に配布し、民営化を進めました。しかしたった一株やそこらを保有しているよりは、今日明日の現金に変えておいたほうがいい、ということで多くのロシア市民はバウチャーを、当時乱立した銀行に販売しました。
  銀行はできる限りバウチャーを買いあさり、国有企業の株式を保有して、ただ同然で企業を買収したり、また転売したりしました。
  後に残ったのは、バウチャーを買いあさって巨額の富を手に入れた国有企業経営者と新興資本家、そしてロシアマフィアたちの支配する社会でした。

  同じ時期、隣の大国、中国でも「改革・開放」の最終工程として国有企業の株式会社化を進めました。
  しかしその結果はロシアと同じように権力を持つ国有企業経営者たちに株式が集中し、従来の労使渾然一体の体質から、より労働者に厳しい垂直式経営が普遍化しました。
  一部の巨大国有企業は海外市場での株式上場が大々的に進められる一方で、不採算部門の切捨てと労働者のリストラがすすめられました。中小の国有企業はその大半が株式会社化や売却を通じて民営化が進められました。

  最大級の企業スキャンダルで倒産したエンロンでも従業員持ち株制度が実施されていました。エンロン経営陣は粉飾に粉飾を重ねた経営の実態を社員にひた隠しにし、多くの労働者が退職後の年金資金まで同社の株式に投じました。しかし粉飾は結局、破綻をむかえました。
  多くの労働者が紙切れとなったエンロンの株式を持ったままエンロンを去りました。しかしエンロン経営者たちは破綻寸前に株を高値で売り抜けて莫大な富を手にしたのです。

投機マネーに公共サービスを売り渡すな

  ライブドア、村上ファンド、そして現在ではスティールホールディングなどの投機マネーによる企業買収劇が注目されています。買収する側もされる側も異口同音に「株主の利益」を叫んで丁々発止を繰り広げています。
  しかし、このような「株主の利益」なるものが、そこで働く労働者や利用者の利益とは無縁、それどころか全く反対の性質であるといわざるを得ません。
  また株価とその企業の社会的公共性や生み出される社会的価値とは無縁であることもNTTの労働者が指摘したとおりです。

  公共サービスである郵政事業が、社会的に必要なサービスや労働とは全く無縁な株式市場のカジノ資本主義の荒波に翻弄される必要はまったくありません。
  いま郵政事業に必要なことは従業員持ち株制度などではなく、そこで働くすべての労働者の人権を尊重し、雇用身分や労働組合に分け隔てなく、労働者一人一人が健康で文化的な生活を営むことのできる労働条件を確立することを通じて、公共サービスの維持・向上につめることです。

  郵政事業は「株主」のものではない!
  郵政事業を市民・社会の手に!

 

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