郵政民営化を監視する市民ネットワーク

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Ubin Watch news No.38
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 「民営化から」から「民主化」へ
 ―郵政事業を市民・社会の手に―

  「ゆうちょ銀行」のある外務職員が嘆きます。「本当にお客様にとっていい商品を紹介できているのだろうか」と。
郵政グループ各社は現在様々な商品を扱っていますが、その中にはいわゆるリスク商品と言われるものも少なくありません。投資信託や変額年金保険などはその最たるもので、山間僻地の年金暮らしのお年寄りにはこれまであまり馴染みのない商品です。また一部民間銀行と提携した住宅ロ−ンや外資と提携したがん保険なども同様にユニバーサル・サービス商品としての価値にふさわしいものでしょうか。

ユニバーサルサービスの再構築を

  小泉−竹中路線による郵政民営化の理由とは、官業によって経営効率の悪さを招き不透明な資金の流れを招いているから、民間との競争を促すことで効率性を高め、市場へ資金を流せというものでした。
この路線の要求を満たすために前西川社長が取った策は、収益率の向上がすぐには見込めそうもない郵便業務二社より先に、貯・保金融事業二社の営業体質の強化と市場競争型商品の開発、さらにはそれら民間の手法を学ぶためとした様々な提携商品の開発でした。そして、その資金の自主運用を支えるマーケット・トレーダー育成を始め、今まさに投機市場へ打って出ようとしていた矢先のリーマン・ショック。幸か不幸か私たちの預貯金がいっぺんで吹っ飛んでしまうという事態は避けられました。

郵便業務は公社時代から激しいリストラが続いており、ユニバーサルサービスのほころびは誰の目にも明らかになってきています。本来その立て直しは急務であったはずですが、西川経営陣にその意志はありませんでした。郵便ネットワークのほころびが、金融ユニバーサルサービスの急速な崩壊をも招いたのです。
民営化とは、地方の切り捨てに繋がるということを再度市民は身にしみて確認したのです。

格差の解消は郵政職場の現場から

  10月20日になされた閣議決定「郵政改革の基本方針」のなかに、「全国あまねく公平に」という文言が復活していることを私たちは素直に評価したいと思います。この一言に込められた、市場原理や競争原理を超えた市民の連帯を基礎にした事業経営の可能性を見るからです。
ただし、いうまでもなくこの文言の下に130年もの長い間官業として経営され続けてきた郵政事業に染みついた官僚体質というものも、再々度問題にせざるを得ません。しかもその上意下達の官僚主義体質は民営化によってますますひどくなっているといいます。
営業成績によっては支店長クラスでもすぐに配転させられると聞きます。そしてその営業ノルマは、今や現場の圧倒的多数者となった非正規労働者末端まで課せられ、賃金査定や果ては雇い止めなどをちらつかせながらのノルマの締め付けが行われているといいます。
市場効率第一というかけ声の下、現場裁量や現場決定権は国営時代以上に取り上げられ、期間雇用、派遣、請負、パート等様々な雇用形態が入り乱れる職場現場ではチームとして協働することで生まれる同僚意識さえなくなってきています。ただただ上から言われることをそのまま実行するロボットのような労働者。しかも会社の都合によっていつでも好きなときに解雇を行えるような雇用形態がまたその上意下達の職場環境を補強していきます。

郵政非正規の賃金だけでは暮らせず、学習塾の講師を兼業してる方が言われます。「生徒は私のことを先生と呼んでくれますが、郵便局にいるときはまるで奴隷扱いですよ」。
「郵政改革の基本方針」の中には、「生活弱者の権利を保障し格差を是正する」という文言もあります。そのためには何よりも郵政労働現場の格差の解消が求められます。事業の民主的改革無くして地域福祉の拠点化はありません。

 民営でも官営でもない
 郵政市民公社へ

経営の民主化と事業の社会化が再生への道

西川経営陣の暴走がもたらしたもの

  10月1日、日通ペリカン便と日本郵便の「ゆうパック」との統合会社「JPEX」がその完全統合を祝うはずでした。完全統合はこれまですでに二度にわたって延期されており、今回も準備不十分として所轄総務省からの許可がおりませんでした。国会でも取り上げられた統合に絡む両会社の非正規労働者の大量リストラという事態もこれに伴って何とか回避できました。
第三種郵便不正取り扱い事件、かんぽ生命保険の不払い問題、かんぽの宿売却疑惑等々。国営時代から蓄積されてきた不正事案もある一方、民営化後に噴き出てきたスキャンダルの中には、仲間内の民間資本への明らかな利益誘導ではないかと思われるものも少なくありません。チーム西川と呼ばれていた経営陣中枢による郵政事業の私物化が行われていたのではないかという疑惑です。
これらの疑惑をはっきりするためには、また、今後このような疑惑を生まないようにするためには、何よりも経営の透明化が求められるでしょう。それも、民間会社の「事業秘密」といった非公開情報の範囲の設定を基本的に取っ払う必要があると思います。

決定プロセスそのものの公開を

  情報開示の重要性については「郵政改革の基本方針」にも一項設けられています。曰く「再編成後の日本郵政グループに対しては、更なる情報開示と説明責任の徹底を義務付けること」と。今後この情報開示の徹底を図るための具体的な仕組みの構築へと取り組みが始まっていくと思います。
まずは市民が、経営決定のプロセスそのものを監視することができる仕組みを作らなければなりません。決定した後でその情報だけを開示されても、それらが情報の全てであるかの検証が困難だからです。決定後であれば、都合の悪い箇所を隠したり曖昧な書き方でごまかしたりといったことは、これまでのお役所の情報開示の中でさんざん見せられてきたものです。

市民の経営の監視を担保するには

  四分社化された郵政事業を以前のように三事業一体で運営しユニバーサルサービスを守っていくべきとする今回の閣議決定、郵政改革の方向性とその思いを私たちも共有するものです。
ただ、「株式会社形態」を当面のものとせず「事業の機動的経営を確保するため」として積極的な位置付けを行っていることには、まだ議論の余地があるのではないでしょうか。
全株国持ち株となれば、確かに理論的には株主は国民となり、株主である国民が経営情報の開示を求めることは当然の権利となります。しかし株主総会の場に全ての情報が開示されるという保障はなく、そもそも日常の経営プロセスに関与していない限り開示された情報の正確な正否判断も困難でしょう。
郵政事業の経営プロセスへの市民の日常的な関与の保障という私たちの思いからいうと、このままではまだまだ不十分なのではないかと思います。

「株式会社」から「市民公社」へ

  経営の機動性といいますが、経営の方向性はもう決まっています。経済の好不況に左右されない人々の暮らしと生活を下支えするユニバーサルサービス事業の提供です。同様に市民の社会福祉インフラとしての介護や年金などの業務も扱うというアイディアも、私たちは大いに広く積極的に議論されるべきだろうと思います。
であるからこそ、将来の経営形態は民間私企業の形態を残した株式会社形態ではなく、もちろんかといって以前の官僚独裁型の「公社」でもない、市民のための、市民に開かれた、市民そのものがその経営や事業に直接関与することのできる“市民公社”といった形態のあり方が議論されてもいいのではないかと思います。その議論ができるのも今を置いてないだろうと。

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