
まさか民営化審議のさなかに、このような悲劇が起こるとは想像だにできませんでした。市民ネットワーク一同、永岡洋治議員のご冥福をお祈りします。 |
もっと審議を 全国民が注視
いよいよ参議院での郵政民営化関連法案の審議が山場を迎えようとしています。
参考人質疑につづき7月28日には京都と盛岡で地方公聴会が開かれました。単なる採決に向けたセレモニーにしてはならないと両会場では炎天下、地元の市民たちが地方の声を国会に届けようと必死のビラまきを行いました。
8月13日の会期末までもう時間はあまりありません。連日、報道では郵政法案の審議内容そっちのけで、「政局」がらみの話題ばかりが繰り返されていますが、私たちは残された審議時間を有効に使い、さらに濃密な法案審議を求めるものです。
生田総裁「料金値上げも」と民営恫喝
参議院の特別委員会では日本郵政公社の生田総裁が頻繁に答弁に立つ姿が見られます。かつては「民営化は政治の問題」として当事者としての発言を控えていた氏ですが、ここへきて大きく踏み込んだ答弁を繰り返すようになりました。
すでに衆議院特別委員会での法案審議の場で、「三事業一体でなくてもいい」「分社した方が機能的だ」とその本音をのぞかせていましたが、参議院にその場を移してからは、「もし公社のままでいくのであれば、相当思い切って公社法の改正をしていただきまして経営の自由度を増すことによって、民間に準じたような形にしないと事業は持たなくなる。あるいはそれがもし民業圧迫で難しいのであれば、いい内容での民営化にしていただく」と二者択一の選択肢しかないと繰り返し発言しているのです。
さらには「公社経営のままでは料金値上げや一部地域でのサービスの合理化を検討する必要がある」と恫喝とも受け取れるような「民営化待ったなし」発言まで行うありさまです。
郵政公社も民営化実現へ意志表明
この雄弁さの背景には、衆議院における薄氷の可決があることはまちがいありません。もし否決という事態になったら、今まで民営化準備室に公社の精鋭職員30余人を送り込み制度設計を行ってきた努力が水泡に帰してしまうという危機感から、与党委員の質問に答える形で積極的な発言に打って出ることを決意させたのでしょう。
郵政公社のホームページは、2度にわたり「郵政民営化法案における生田総裁の考え方について」と題して参議院特別委員会での答弁内容を載せました。これは公社として明確に民営化実現への不退転の意志を表明したことにほかなりません。
すでに公社は民営化に向けて走り出しているのです。
生田総裁は法案に特例として盛り込まれた国際物流子会社についての質問に対して、「来年4月1日からのスタートを考えている」と述べたうえで投資額についても「100億円から200億円くらいの幅でやっていける」と時期、投資額について具体的に示し、合弁会社としてある国際インタグレーターとの話も進んでいることも明らかにしました。
先の衆議院特別委員会で加藤寛参考人(千葉商科大学学長)が「今度オランダと提携してやろうということになってます」と述べたように、この合弁相手がオランダTPG社であることはすでに衆知の事実です。
法案が通る前から提携話
民営化法案に特例として会社発足1年前からの国際物流への進出を盛りこませ、すでに法案が通る前から提携話は具体的な金額まで含めて進行しているのです。もし計画がご破算にでもなれば国際問題にも発展しかねないと生田総裁は必死で熱弁をふるっているのです。
これは総裁がよく言う「顧客サービス」のためでしょうか。国内での信書事業は将来性がないからと中国アジア市場に進出し、その結果国内サービスはおろそかになり空洞化が進むことになりはしないでしょうか。
民営化により「利便が向上する」と強調しますが、私たち市民は郵便局に、コンビニやローンや住宅リフォーム仲介というような雑多な利便は求めていません。ていねいで確実、安全な郵便・金融サービスを第一に求めているのです。
法的拘束力持たないリップサービス
参議院審議ではより「ていねいな」政府答弁が行われているように見えますが、中身は衆議院を越えたものではなく、民営化によるサービス低下への不安はぬぐわれません。「答弁は法的拘束力を持たない」のであり、いくらリップサービスで「十分配慮する」と言っても市民は信用しません。
残された貴重な時間、突っ込んだ審議を行い、暑さを吹き飛ばす良識ある結論を期待します。
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