
国会決議に抵触 民営化前に地方郵便局を解体
喉元過ぎれば・・・
いよいよ1月23日に民営化準備企画会社「日本郵政株式会社」が正式発足します。
来年10月の新会社発足へ向け、郵政民営化は秒読み段階に入ろうとしています。
昨年夏の国会での熱い論戦が嘘のように、郵政民営化の話題はもう新聞紙上でもほとんど取り上げられなくなっていますが、現場の郵便局段階ではいま民営化へ向けた準備作業が急ピッチで始まっています。
国民にはほとんど明らかにされませんが、その中身は、従来の郵便局のサービスを大幅に減らすおそろしいものとなっています。国会での政府答弁や付帯決議を無視した住民サービス切り捨ての郵便局の解体計画が、いま民営化前に行われようとしているのです。
地方の郵便局から外務員が消える
その計画は、「集配拠点の再編」と「貯金・保険外務員集約化」というものです。
「集配拠点の再編」というのは、配達・集荷を行っている郵便局(普通局・特定局)を全国的に統廃合するというもので、今集配業務を行っている約4700局のうち、約1100局を「統括センター」とし、郵便事業会社職員はすべてそこに所属させるというものです。
そして残る3600局のうち、2600局は「前送施設」に、1000局は無配局(配達を行わない窓口だけの特定局)にするという内容です。
職員の出勤先は当面は「統括センター」と「前送施設」としますが、段階的に統括センターに集約するのです。
例えば北海道を見れば、現在配達業務を行っている郵便局446局のうち約3分の1の141局が無配局になり、配達職員はわずか57局の統括センターに集約される(前送施設は248局)のです。
今まで身近な郵便局から来ていた局員が居なくなるだけでなく、配達郵便局で行っていた集荷サービスや不在郵便の再配達、あるいは夜間でも受け付ける「ゆうゆう窓口」も無くなるおそれがあるのです。
貯金・保険の外務サービスも無くなる?
もうひとつの「貯金・保険外務員集約化」というのは、無配化される特定郵便局で貯金、保険の業務を行っていた外務員を「外務営業拠点局」(3600局)に集約化するというものです。そして民営化後にはさらに集約(統廃合)を実施するというのです。
これにより、今まで保険・貯金の集金や満期金の支払い、あるいは年金相談などライフコンサルティングとして各家を回り、いろんな悩みも聞いていた外務員の多くが消えることになるのです。用があれば直接郵便局の窓口に来い、ということなのでしょうか。
当面は地方の集配特定局が対象となりますが、民営化後は都市部の郵便局(普通局)も集約化されて、貯金・保険の外務員は営業専門となり従来の集金や各種相談などのサービスは行われなくなるでしょう。
国会答弁・決議を無視
郵政公社はこの計画を今年3月中に確定させ、8月から段階的に実施するとしています。民営化を前に、それを先取りにしたような施策は大きな問題があります。
先の国会審議では、多くの委員から郵政民営化による住民サービスの低下への懸念が出され、わざわざ付帯決議で「郵便局において郵便の他、貯金、保険のサービスが確実に提供されるよう、関係法令の適切かつ確実な運用を図り、現行水準が維持され、万が一にも国民の利便に支障が生じないよう万全を期すること」と政府に特段の配慮をするよう決めたほどでした。
今回の郵便局再編・集約化はこの国会決議に抵触することは明らかです。それとも、民営化前に「現行サービス水準」を下げてしまうというのでしょうか。
さらに、付帯決議の「民営化後の職員の雇用安定化に万全を期すること」についても、民営化前にできるだけリストラしてしまおうというのでしょうか。
「承継計画」に市民の意見を
法案が一旦通ってしまえば、あとは何でもあり、そんな民営化を国会は承認したわけではありません。
今年4月からは郵政公社が出資する国際物流子会社も発足し、海外市場進出への地歩を固めようとする一方で、利幅が薄い国内郵便市場はどんどんおろそかにされようとしています。まもなく省令による郵便局設置基準も策定され、都市・地方で廃止される郵便局も明らかとなります。
国会決議に逆行し、「郵便局ネットワーク」はズタズタに寸断され、「サービス水準」もますます低下させられようとしているのです。
私たちは、このような市民を置き去りにした郵便局の解体、空洞化を許すわけにはいきません。
新会社への「承継計画」を策定する「日本郵政株式会社」は、情報公開を徹底し、市民の意見を取り入れた計画を策定、実施すべきです。
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